岡山県一人旅のすすめ ~車なしで行く「晴れの国」~
SPECIAL ARTICLE
はじめに
一人旅の魅力は、自分のペースで自由に旅を楽しめる点にあります。気兼ねなく、自分の気持ちに素直になって、訪れる場所や体験を選べるのが魅力です。また、一人旅は自分自身と向き合う時間を持つ絶好の機会でもあり、日常の忙しさから解放され、心のリフレッシュができるでしょう。
本特集では、筆者の体験もふまえて、一人旅におすすめの旅先として「岡山県」をご紹介します。
岡山県は「晴れの国」とも呼ばれ、おだやかな気候と明るい日差しのもと、自然豊かな風景や歴史的な街並み、おいしいグルメなど、さまざまな魅力が楽しめる場所。また、車なしで一人旅を楽しめるのもポイントです。
そうした岡山県の魅力を、以下のセクションで詳しく紹介していますので、最後までぜひチェックしてみてください。
岡山県の基本情報・特徴
はじめに、岡山県の基本情報や、一人旅をより楽しむために事前に知っておきたい岡山県の特徴をご紹介します。
地理 |
岡山県は瀬戸内海に面し、東は兵庫県、西は広島県に接しています。 |
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気候 |
岡山県の気候は、主に瀬戸内海式気候です。1年を通して晴れの日が多く、1mm以上の雨が降る日は全国最少。そのため岡山県は「晴れの国」と呼ばれています。 |
産物 |
岡山県の特徴的な産業として、繊維業が挙げられます。岡山県は日本におけるデニム生産の中心地。特に「国産ジーンズ発祥の地」とも言われる倉敷市児島地区は、デニム生地やジーンズの製造で有名です。
また食べ物に関しては、岡山県はフルーツの生産地として知られ、特に、白桃、マスカット、ピオーネが有名。 |
アクセス |
山陽道の中央に位置する岡山県はアクセスが良く、気軽に行くことができます。 県庁所在地である岡山市は山陽新幹線などで各地と結ばれているので、岡山市まではスムーズに行くことができるでしょう。また、岡山空港からは国内外への直行便が運航されています。 |
ここでは東京からのアクセスを例に、新幹線と飛行機での岡山県へのアクセスについて紹介します。
新幹線でのアクセス(東京~岡山)
東京から新幹線で岡山県へ行くには岡山、新倉敷などの駅を利用します。所要時間は岡山駅まで3時間15分、新倉敷駅まで3時間35分です。
飛行機でのアクセス(東京~岡山)
飛行機利用の場合、東京(羽田空港)から岡山空港まで1時間15分。空港での移動時間やチェックインなどを考慮すると、全体で2時間半から3時間程度かかることがあります。また、岡山空港から岡山駅まではリムジンバスで約30分です。
一人旅がより楽しめる!事前に知っておきたい岡山県の特徴
一人旅で岡山県へ行く際は、以下の特徴を押さえておきましょう。
岡山県の特徴①
果物王国
岡山県は「果物王国」として知られ、多種多様な果物が栽培されています。特に有名なものは白桃とマスカットです。
岡山産の白桃は袋掛けをして直射日光に当てないのが基本。皮は乳白色で繊細、果肉は柔らかくジューシーです。特に「清水白桃」は高級白桃の代表と言えるでしょう。
また、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」という高級ブドウ、ニューピオーネやシャインマスカットといった新品種の栽培も盛んで、これらも高い評価を得ています。 岡山県の果物は、県内外で人気があり、果物狩り体験や直売所なども充実しています。岡山県を訪れる際は、ぜひこれらの果物を味わってみましょう。
岡山県の特徴②
南北の違い
すでにご紹介したように、岡山県の地形は北高南低。そのため観光についても南北で違いがあります。
北部の山と高原では森、滝、渓谷など、山の自然が主な観光資源。西日本を代表する高原リゾート「蒜山高原(ひるぜんこうげん)」、川の中の露天風呂で有名な「湯原温泉(ゆばらおんせん)」などが主な観光スポットです
。
夏は比較的涼しく、冬はスキーが楽しめる場所もあります。
一方南部は瀬戸内海に面し、海と島の風景が魅力。岡山城などの史跡も豊富です。公共交通網も発達していますし、洗練された店や大きな商業施設があるのも主に南部です。
※本特集ではアクセスのよい南部のスポットを主にご紹介しますが、北部には南部とはまた違った魅力がある点も押さえておきましょう。
岡山県一人旅におすすめのスポット
一人旅の鍵を握るのは、ひとりでも楽しめる観光スポットの選択です。この章では、公共交通機関を利用し、車なしで行けるおすすめの場所を5つご紹介します。
①倉敷美観地区 (くらしきびかんちく)
※倉敷美観地区(著者撮影)
江戸時代から明治時代にかけての街並みが残るエリアで、街歩きや食べ歩きができるスポット。大原美術館をはじめとする美術館もあり、これだけでも訪れる価値があります。
ちなみに、倉敷美観地区は岡山県の観光スポットのなかでも人気なので、観光客向けサービスも各種用意されていて、一人旅に慣れていない方にもおすすめ。アクセスもJR倉敷駅から徒歩15分と良好です。
倉敷美観地区は川沿いの町並みが有名ですが、ここだけが美観地区ではありません。もう1つの大通り「本町通り」や、周辺の路地にもぜひ足を運んでみましょう。そうすることで食事や買い物の選択肢が増え、より満足度が高まります。
また、白壁の土蔵と洋風建築が目を引く川沿いの通りに対して、本町通りや路地には和風の住宅が多く残っています。なかでも本町通りにある「井上家住宅」は美観地区最古の町屋で、国指定重要文化財。内部も公開されているので、見学するのがおすすめです。
なお、倉敷美観地区の長さは約400m。漫然と歩くだけではすぐに回り終わってしまいます。買い物、美術鑑賞、学びなどを組み合わせて、積極的に楽しむことが倉敷美観地区を観光する際の秘訣です。
②岡山後楽園 (おかやまこうらくえん)
※岡山後楽園のタンチョウ(著者撮影)
岡山後楽園は江戸時代に造られた大名庭園。広い芝生が特徴ののびやかな庭園です。現在では多くの方が、散策や写真撮影を楽しんでいます。
アクセスはJR岡山駅からバスまたは路面電車で20分程度。便数も多いので気軽に行ける、定番の観光スポットです。園内には数カ所の茶店もあり、抹茶や軽食が提供されています。
岡山後楽園を訪れる際に知っておきたいプラスアルファの情報は、各種イベントや特別公開です。時期によってさまざまなイベントなどが開かれているので、ぜひチェックしておきましょう。
例えば年3回行われる「幻想庭園」イベントでは夜間開園や和文化体験が楽しめます。また、秋から冬にかけて数回行われるタンチョウの園内散策では、タンチョウが園内を歩き、時には飛行する姿を見ることができます。
興味のあるイベントを事前に調べ、それにあわせて訪問するのもおすすめ。
一方で、ふらっと行ける気楽さも一人旅派には嬉しいところです。
③閑谷学校(しずたにがっこう)
※閑谷学校 講堂の屋根(著者撮影)
閑谷学校は、350年前に建てられた日本最古の「庶民のための公立学校」。
敷地は特別史跡、講堂は国宝、その他ほとんどの建物が国の文化財に指定されています。
驚くべきことに、講堂など一部の建物は1965年まで県立高校の一部として使用され、現在でも研修施設として使用されています。
閑谷学校があるのは岡山県東部の静かな山中。アクセスは、JR吉永駅または伊里駅から市営バスを利用して10~15分程のバス停「閑谷学校」で下車。そこから徒歩5分で受付です。
受付を入ったら、まず敷地の奥にある資料館で、学校の歴史や文化財について学ぶのがおすすめ。ここで予習しておくことで、閑谷学校のすごさが一層よくわかります。
その後、講堂をはじめとする建築物をじっくりと見学しましょう。例えば、講堂の屋根。通常の瓦ではなく、備前焼の瓦が使われていて、1枚1枚異なる色合いを見せています。
歴史や建築に興味がある方は、ぜひ閑谷学校への一人旅で自分の興味を追求してみましょう。行楽シーズンを外せば、静かな雰囲気を感じることもできます。
④鷲羽山(わしゅうざん)
※鷲羽山からの景色(著者撮影)
瀬戸内海国立公園の一部である鷲羽山は、瀬戸大橋の北端に位置する標高133メートルの山。静かな海面、濃淡の島影、船の航跡、そして瀬戸大橋といった、瀬戸内海の風景を一望できるスポットです。
鷲羽山へ行くには、児島駅からバスを利用します。バスで行けるのは、標高80mにある第二展望台までで、約30分で到着。ちなみに児島駅までのアクセスは、岡山駅からJRで約20分、倉敷美観地区からバスで約55分です。
第二展望台から先は遊歩道があり、山頂直下にある第一展望台まで散策できます。景色の良いポイントはいくつか存在しますが、瀬戸大橋との位置関係という点では、第一展望台がおすすめです。
鷲羽山の魅力は昼の風景だけではありません。「日本の夕景100選」に選ばれた夕景もおすすめです。特に日の入りが早く、海側に日が沈む冬至前後の時期が良いでしょう。近隣の府県であれば、夕景、夜景を見てから日帰りすることもできます。
鷲羽山から見る瀬戸内海の風景は、単調すぎない広がりと明るいおだやかさがあり、心をリフレッシュできるため、一人旅にぴったりです。
⑤犬島(いぬじま)
※犬島のアート作品(著者撮影)
岡山市北東部にある犬島は、周囲3.6km、人口50人未満の離島。1時間ほどで回れる小さな島に、産業遺産、アート、田舎の雰囲気などが混在しています。
犬島があるのは宝伝という小さな港から約3km、船で10分の場所。ただし、宝伝港までバスで行けない日もあるので、宇野港から豊島経由で島に渡ることも検討しましょう。宇野港からは船を乗り継いで1時間30分です。
島に着いたらまずは、精錬所の廃墟を利用した美術館へ。その後は島内をぶらぶら歩きながら見てまわるのがおすすめです。北部の2つの集落や、南部のキャンプ場にアート作品が点在し、それらの作品を巡る過程で、瀬戸内海の風景や島の生活を自然と目にするでしょう。
島内を見てまわったら、帰りの船の時間まで、港近くにあるチケットセンターに併設されているカフェや土産物店で過ごすのがおすすめ。島内では数少ない、エアコンの効いた場所です。
瀬戸内国際芸術祭などでにぎわう時もありますが、普段の犬島は離島の雰囲気が強い島。孤独と静けさを愛する一人旅派の方に、犬島は特におすすめです。
岡山県の一人旅で食べたいおすすめグルメ
旅の楽しみの一つがグルメ。この章では、岡山県での一人旅におすすめのグルメをご紹介します。
岡山県のおすすめグルメ①
日生カキオコ
岡山県備前市日生(ひなせ)町の名物料理であるカキオコは、カキを具材にしたお好み焼きです。日生は県内屈指のカキの水揚げで知られる町であり、ここで小さなカキや傷ついたカキをお好み焼きに入れて食べたのがカキオコの起源とされます。
現在では新鮮で大ぶりな日生産のカキをたっぷりと使用し、キャベツや天かすなどの基本的な材料と一緒に調理。カキのエキスが生地に広がり、特有の香ばしさとうまみが加わります。
日生駅から1km程度の範囲にいくつものカキオコ提供店があるので、お好みの店を利用しましょう。
岡山県のおすすめグルメ②
白桃スイーツ
岡山県は白桃の産地として有名で、白桃を使ったスイーツが豊富に楽しめます。
代表的なスイーツの一つが「白桃パフェ」。新鮮な白桃をふんだんに使用し、アイスクリームやクリームとともに層を重ねたぜいたくなデザートです。
また、「白桃プリン」は、白桃のピューレや果肉をたっぷり練り込んだプリン。岡山産白桃に似た乳白色の見た目と、優しい甘さが特徴です。
さらに、「白桃ゼリー」「白桃タルト」「白桃ケーキ」などもあり、各店で個性豊かなアレンジが楽しめます。
岡山の一人旅で体験したいおすすめのアクティビティ
この章では、岡山県一人旅でおすすめのアクティビティを2つご紹介します。
岡山県のおすすめアクティビティ①
陶芸(備前焼)体験
岡山県は日本六古窯(にほんろっこよう)の1つ、備前焼の産地。備前焼は釉薬を使用せず絵付けもしないシンプルな焼き物で、素朴な味わいと土のぬくもりが感じられます。
岡山県には1名から備前焼体験に参加できる施設が複数存在し、初心者から上級者まで対応しています。ただし、多くの場合、体験には事前予約が必要。また、作品の完成には焼き上げが必要なため、手元に届くまで2か月程度かかることが一般的です。
陶芸体験は、ひとりでも楽しめるアクティビティとして人気があります。自分だけのオリジナル作品を作る楽しさを味わってみてください。
岡山県のおすすめアクティビティ②
アフタヌーンティー
アフタヌーンティーとは19世紀のイギリスが発祥の、紅茶とともに軽食やスイーツを楽しむ茶会のこと。
倉敷市では「倉敷アフタヌーンティー」と銘打って、年2回、夏と秋に市内のカフェやホテル約30店舗で、期間限定の特別なアフタヌーンティーセットが提供されます。
ゆったりと優雅なひと時を過ごしたい方は、倉敷アフタヌーンティーを体験してはいかがでしょう。なお、店舗により予約が必要な場合や1名では利用できない場合もあるので、公式サイトで事前に確認しておくことをおすすめします。
まとめ
岡山県での一人旅は、歴史と自然、そして静かな時間を満喫できる絶好の機会です。後楽園や倉敷美観地区での散策はもちろん、美しい海岸線や島の風景で心を癒やすこともできます。さらに、地元の食文化や伝統産業に触れることで、新たな発見をするとともに、心に残る旅を楽しむことができるでしょう。
本特集を参考に、一人だからこそ感じられる自由と、自分だけの時間を楽しむぜいたくを、ぜひ岡山で体験してみてください。