法人設立や個人事業主からの法人成りを果たしたあとは、まず銀行に法人名義の口座を開設する必要があります。
法人口座とは、会社の取引先や金融機関と事業上の金銭のやりとりを行うための法人専用口座のこと。開設するには銀行の審査をパスする必要があり、法人口座を開設することで、ようやく法人としての本格的な活動がスタートすると言っても過言ではありません。法人口座の開設自体が法人としての信用力の証明にもなります。
会社経営自体は、個人口座でおこなっても違法ではありませんが、法人にも関わらず個人口座を使用していると「法人と個人の区別が不明瞭と思われ、顧客や取引先からの信用が下がる」「金融機関から法人とは見なされず、融資を断られやすい」などのデメリットがあるため、法人設立と法人口座の開設は、通常セットで考えるのがセオリーとなっています。
開設にかかる期間は、口座申し込みから2週間程度(法人の設立と同じタイミングで開設する場合は、会社謄本が作成されるまでの1週間前後が加わるので、トータル3週間前後)必要になるため、法人設立後は外部との取引が頻繁になる前に、早めに法人口座を申し込んでおくと良いでしょう。
法人口座は、メガバンク、ネット銀行関わらずほとんどの銀行が取り扱っています。プライベートや個人事業主時代に利用していたメインバンクがある場合は、一度、担当者に話を聞きに行くのも良いでしょう。
ただし、法人口座は個人口座とは異なり、口座維持管理料がかかるケースや、同一行への振込でも手数料が発生するケースがあります。従業員や取引先に給料や代金の振り込みをする機会が多いようであれば、これらの年間コストは馬鹿になりません。
法人口座の開設先は、銀行であればどこでも良いというものではなく、ご自身の会社の経営内容とそれぞれの銀行の特徴・コストを天秤にかけて選ぶのが賢い選び方と言えるでしょう。
銀行の形態別 法人口座の特徴
銀行の形態 | 法人口座の特徴 |
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メガバンク(都市銀行) | 全国に支店を持ち、海外拠点を持つ銀行も多い。海外への送金にも対応。 法人口座の開設は原則的に対面審査となり、審査も厳格。メガバンクの法人口座を持っていると会社の信用力が上がる。 融資機能が高く、高額融資にも対応している。 内部社員の異動が多いため、担当者が変更になることが多い。 法人口座利用時にはさまざまな手数料が発生し、振込手数料も高め。 |
地方銀行・信用金庫 | 地域密着型の金融機関。事業所の所在地を担当する支店が決まっており、地域内での信用力も高い。法人口座開設時の審査はメガバンクと比較すると緩やかだが、原則対面となる。 都市銀行と比較すると融資相談等では全般に親身なサービスを提供。ただし大口融資の場合は審査に時間がかかる傾向がある。融資金利も高め。 内部社員の異動は少なめで、同じ担当者と長年付き合うケースが多い。 信用金庫での法人口座開設には、「信金会員」となる必要がある。 |
ネット銀行 | インターネット上での取引をメインとする金融機関。実店舗が非常に少ないか、まったく持たない銀行も多い。歴史の浅い銀行が多いため、信用力面ではメガバンクや実店舗型の金融機関に見劣りする。 インターネットを経由していつでも送金・振り込みなどの手続きが可能。法人口座の開設審査や融資審査についても来店不要でネットで完結することが多い。 実店舗などの営業コストがかからないことから、法人口座の取引手数料が有利に設定されている。 |
このように、銀行の規模や形態によって、法人口座にもそれぞれ特色があります。
法人口座を作る銀行を選ぶ際は、事業に必要な機能を満たせる銀行を選ぶと良いでしょう。
たとえば、大手の顧客との取引が多い場合や事業内容的に信用力が重視される場合はメガバンクの法人口座を、地域に密着した物品やサービスを提供する法人であれば地方銀行や信用金庫の法人口座を、振り込みや送金などの手続きをスピーディーに終えたい場合や法人口座にかかるコストをできるだけ抑えたい場合はネット銀行の法人口座がおすすめ。事業内容によっては、どちらにも口座を作り、使い分けるのも良いでしょう。
ネット銀行は規模が比較的小さな法人にも対応しており、インターネット上で口座開設手続きが完結するネため、普段使いでの利便性が良い金融機関と言えます。
口座維持手数料が無料で、振込手数料や入金手数料などのコストが低く抑えられている点も大きな魅力。
そこで本特集では、メガバンクや信用金庫と比較すると、経営者のあいだでも意外と知られていないネット銀行の法人口座にスポットを当てて、メリットやデメリット、便利なサービスなどを解説します。
ネット銀行の法人口座のメリット
法人口座の多くは、一般的な個人口座とは異なり、口座を維持するための手数料が毎月発生します。法人口座を持っているだけで手数料がかかるケースと、インターネットバンキングなどの追加サービスを申し込んだ段階で発生するケースがありますが、費用は月額1,000円台から3,000円台と決して安くはなく、法人口座を持つ際の大きなコストとなります。
インターネット上に支店を持つネット銀行の場合は、法人口座の開設とインターネットバンキングの利用が紐付いているうえ、管理料や基本料を無料としているところがほとんど。
たとえば、口座維持管理料が月額2,200円かかる法人口座であれば年間2万6,400円のコストが発生するところを、ネット銀行では無料にすることができます。
特に創業期や規模の小さな法人にとっては注目すべきネット銀行のメリットと言えるでしょう。
法人口座の口座維持管理料(税込)を比較
ネット銀行 |
オススメ! GMOあおぞらネット銀行 |
無料 |
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オススメ! 楽天銀行 |
無料 | |
都市銀行(メガバンク) | 三菱UFJ銀行 BizSTATIONの場合 | 月額1,760円 BizSTATION Lightは無料 |
三井住友銀行 パソコンバンクWeb21<デビュー>の場合 | 月額2,200円 パソコンバンクWeb21<ライト>は無料(1日あたりの上限振込額300万円まで) | |
地方銀行・信用金庫 | 横浜銀行 | 月額2,200円 |
城南信用金庫 インターネットバンキングBプランの場合 | 月額3,300円 Aプラン(残高照会、資金移動のみ)は月額1,100円 |
取引先との資金のやりとりや、従業員(経営者本人も含む)への給与支払いなど、法人口座ではほぼ毎月、振り込みをする機会があります。
個人口座であれば、同一支店や同一行あての振込手数料は無料になることもめずらしくありませんが、法人口座の場合は同一支店あてでも手数料が発生するケースがあります。
特に他行あての振込手数料は高く、メガバンクで平均770円(税込)、地銀や信金で平均550~660円(税込)程度。
ネット銀行では、これらの振込手数料も低く抑えられており、同一行あては無料、他行への振り込みでも100円台から200円台とリーズナブルです。
たとえば、毎月10件程度の他行への振り込みがある場合、振込手数料が1回770円かかる銀行であれば年間9万2,400円の手数料が発生するところを、ネット銀行では3万1,320円(GMOあおぞらネット銀行の場合)と約3分の1まで抑えることが可能。
他行へ振り込みが多い場合は、ネット銀行の法人口座を利用したほうが手数料コストを大幅に節約することができます。
法人口座の振込手数料(税込)を比較
ネット銀行 |
オススメ! GMOあおぞらネット銀行 |
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楽天銀行 |
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都市銀行(メガバンク) | 三菱UFJ銀行 BizSTATION、BizSTATION Light |
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三井住友銀行 パソコンバンクWeb21<デビュー> |
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地方銀行・信用金庫 | 横浜銀行 |
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城南信用金庫 |
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現在、多くの銀行はインターネットバンキングサービスを提供しており、残高照会や取引明細の確認、振り込み、決済などの手続きをインターネット上で行うことができます。
個人口座では当たり前のように無料で利用できるインターネットバンキングですが、法人口座の場合は利用を申し込むことで別途手数料が発生するケースもあり、また、銀行によっては利用時間が決められている場合もあります。
インターネット取引が主体のネット銀行の場合、資金移動は原則24時間365日で対応しており、振込手数料以外の追加費用もかかりません。
また、口座開設時も各種証明書を郵送やアップロードすることで非対面での申し込み手続き・審査が可能です。「仕事が忙しくて銀行へ行く時間がとれない」「新型コロナウイルスの感染リスクを避けたい」など、法人口座の開設を効率よく行いたい場合にもメリットが多いと言えるでしょう。
メガバンクや地方銀行・信用金庫にない独自の特典が用意されているのもネット銀行の法人口座の特徴です。
GMOあおぞらネット銀行や楽天銀行では、法人口座に紐付いたデビッドカードを利用することで毎月の利用額の1.0%をキャッシュバック。
デビッドカードは利用額を口座から直接引き落とすため、出金履歴が把握しやすく、法人口座の資金管理にも役立ちます。
その他、GMOあおぞらネット銀行では、取引実績に応じてポイント(GMOポイントもしくはPontaポイント)が貯まるサービスや、月額500円(税込)を支払うことで3万円以上の振り込みが一律135円(税込)になる「振込料金とくとく会員」制度などを提供しており、法人向け特典が充実したネット銀行のひとつとなっています。
ネット銀行が提供する特典例
オススメ! GMOあおぞらネット銀行 |
Visaビジネスデビッドカード |
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ポイントサービス |
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振込料金とくとく会員 |
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楽天銀行 | 楽天銀行ビジネスデビットカード(JCB) |
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コスト面と利便性の面で使い勝手の良いネット銀行ですが、法人口座として利用する際に注意したい点もあります。
ネット銀行の法人口座のデメリット
ネット銀行の法人口座で注意したいことのひとつが融資機能です。1,000万円以上の大口融資にも対応しているメガバンクや、地域密着型で融資相談に親身に対応してもらえる地方銀行・信用金庫とは異なり、ネット銀行では融資を行っていないところや、オンラインでの小口融資(500万円前後)がメイン、あるいは融資の代わりにファクタリング(売掛債権の買取)を実施しているところも少なくありません。
高額の融資を受けたい場合や、対面でしっかりと相談をしてから融資を受けたい場合は向いていないと言えるでしょう。
ただし、「少額の融資をオンラインですばやく受けたい」「売掛金を借入金で処理したくない(バランスシートを汚したくない)」という場合は、これらの資金調達サービスのほうが有用となる面も多くあります。
各銀行のサービス内容、金利・手数料などを比較し、ご自身の会社に合った資金調達サービスを選択すると良いでしょう。
国や地方自治体が実施する補助金・助成金は、法人の活動資金として利用価値が高く、条件に当てはまるのであれば積極的に活用したいという経営者の方は多いはず。
ただし、補助金・助成金の実施団体によっては、振込先の金融機関が指定され、ネット銀行では受け取れない場合があります。
公共団体の補助金や助成金を申請する場合は、ゆうちょ銀行のような全国対応の銀行か、メガバンクの法人口座があると安心です。
海外の企業と取引がある場合、それぞれの銀行を介して資金をやりとりするためには「SWIFTコード」と呼ばれる金融機関の識別コードが必要になります。
ただし、SWIFTコードは国内のすべての銀行に割り振られているわけではなく、一部のネット銀行や地方銀行にはないことも。
国内の銀行であれば、銀行名・支店・口座番号によって資金をやり取りできますが、海外の銀行と資金の受け渡しが発生する場合は、法人口座を開設する銀行のSWIFTコードの有無を必ずチェックしておきましょう。
以下はクチコミランキングを運営する弊社代表のおすすめです。
現役経営者による忖度一切なしの本音の口コミになりますので、是非チェックしてみてください。
「まず会社を経営するのであれば、ネット銀行だけではなく、メガバンクかメガ信託の口座も作っておいたほうが良いと思います。
メガバンクやメガ信託も口座開設だけなら無料です。Webで振込できるサービスを契約しなければ月額料金はかかりません。私は海外企業との取引用、助成金の受け取り用にメガバンクの口座も活用しています。メインで使っているのはネット銀行です。
私が会社を設立した当時は、PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)の法人口座が振込手数料も安く、便利だったのですが、今作るならGMOあおぞらネット銀行が良いと思います。理由は社員の口座を同行間にすることで、経費精算といった際の振込手数料が同行間無料となるから。これだけで年間何万円かはコストを削減できます。
また法人デビットカードで1%還元というのも大きいです。法人設立当初はクレジットカードをなかなか作れませんが、デビットカードならすぐに作れますし、使った額の1%が戻ってくるというのは経費削減にも役立ちます。経営者は常にコストに敏感になるべきです。2021年3月現在、コスト管理という点で考えれば、GMOあおぞらネット銀行に優位性があります。」
ひとくちに法人口座と言っても、銀行の種類によってそれぞれの特徴や得意とする分野は大きく異なります。
ネット銀行の法人口座の魅力は、なんといっても毎月の資金移動のような日常的に発生するコストを低く抑えられる点。
また、インターネット上で24時間365日手続きができる点や、オンラインならではのスピードも欠かすことのできないメリットです。
メガバンクや地方銀行、信用金庫が得意とする信用力や融資機能の面では弱点もありますが、法人設立から間もない創業期(経費を抑えたい時期)の法人口座として、あるいは使い勝手の良いふたつめの法人口座として検討するのであれば、本来のメリットを十分に発揮できるでしょう。
今回ご紹介したネット銀行の法人口座のメリット・デメリットも参考に、ご自身の会社に合った法人口座を選んで上手に活用しましょう。
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