
40代女性におすすめのエッセイ5選!元気をもらえて、心が晴れる作品は?
SPECIAL ARTICLE
はじめに
女性にとって40代は、「大人の階段」を上り始める”変化”のタイミングです。
家庭では子どもたちが思春期に入り、少しずつ自分の手を離れたり、仕事では人に教わる立場から人を導く立場へと転換が求められたりと、色々な変化がみられる年代。
また、ホルモンバランスが変わり始めることで、20代や30代よりも体が「疲れやすくなった」と感じる40代の女性も少なくないでしょう。
歳を重ねていくのは生きることの証であり、美しく、素晴らしいことです。けれど、ライフステージの移り変わりは時に、歳を重ねることへの戸惑いや将来への不安、去り行く日々への寂しさなどを生むもの。
実は、こうした40代女性の感情の揺れに効果的なのが、「エッセイ」です。
本特集では、40代女性の「心が晴れる」おすすめエッセイを5つ、厳選してご紹介します!
40代の女性にとって、エッセイの魅力とは?

40代の女性にとって、なぜエッセイが魅力的なのでしょうか?
エッセイの魅力はまず、「共感できる」ことです。筆者は40代になってから、親に面倒をみてもらう側から、親の面倒をみる側へと変わるのを感じました。
その際、頼る人が消えてしまう寂しさがあったのですが、同じ思いを抱えている人のエッセイを読み、「自分一人ではない」とほっとしたのを覚えています。
また、もう1つの魅力は、「読みやすい」こと。普段、家事や仕事に忙しい40代の女性。エッセイは一話完結型のものが多く、すき間時間に一話を読み切ることができます。会社のお昼休みや、家事の合間の休憩時間など、手軽に読めるのもエッセイの魅力です。
40代の女性におすすめのエッセイ5選
以下で紹介する5冊のエッセイは、40代女性の「心が晴れる」をテーマに選書しました。
その際、最初に注目したのは、「読みやすさ」です。すき間時間や寝る前のわずかな時間でも、自分の気が向いた時に気軽に読めるよう、わかりやすい言葉でさらっと読めるエッセイを選出しています。
また、エッセイを読み、共感して心が楽になることもあれば、新しい考え方を知り、悩むことが馬鹿らしく思えることもあるでしょう。
そのため、「共感」という点では、読者の皆さんと同じ「女性」の著者によるエッセイを選び、「新しい考え方」という点では、異なるバックグランドを持つ著者のエッセイを選ぶことで、多様性を持たせました。
ぜひ、気になる一冊を見つけてみてください。
40代の女性におすすめのエッセイ
40代の女性におすすめのエッセイ その1
上り坂下り坂
『上り坂下り坂』は、『小石川の家』で芸術選奨文部大臣賞を受賞した青木玉さんの著書。著者は、作家 幸田露伴さんの孫で、同じく作家の幸田文さんを母に持ちます。
このエッセイを読むと、時間の感覚がなくなっていくのを感じます。というのも、今は亡き祖父や母との思い出話も、コウモリをみたことがないから見たいと言って、夜の街や多摩川にコウモリを探しに行く現在の話も、すべてが時空を超えたようなみずみずしさであふれているからです。
本書は、著者が70歳の頃のエッセイを集めたもので、作中の「現在」の話でも、今から20年以上前にあたる2000年頃のこと。著者の祖父や母との思い出話は、当然それよりももっと前の昭和の頃の話なのですが、すべてが「今ここ」で起こっているような、自分が実際に体験しているかのように感じる臨場感があります。
『上り坂下り坂』は、歳を重ねることへの心配や不安で心が揺れてしまうとき、ぜひ手に取ってもらいたい一冊。いくつになっても、みずみずしく「今」を生きられることがわかります。
著者名 | 青木 玉 |
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出版社 | 講談社 |
ページ数 | 240ページ |
エッセイのジャンル | 随筆家の日常エッセイ |
おすすめポイント |
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40代の女性におすすめのエッセイ その2
ねにもつタイプ
『ねにもつタイプ』は、第23回講談社エッセイ賞を受賞した岸本佐知子さんのエッセイ。
著者は多数の洋書を翻訳する翻訳家で、本書は、著者の「現実」の体験と「脳内」の体験とを綴った一冊です。
本書では、翻訳中についつい考えてしまうコアラの鼻の「材質」や、どうしても理解できない「ちょんまげ」の起源、勤めていた企業で練習させられた「本気の」フレンチ・カンカンなど、
自分の想像を超えた刺激をもらえること間違いなしです。
まさに、このエッセイを一言で例えるならば、「スパイスカレー」。
『ねにもつタイプ』は、仕事では部下と上司の間に挟まれてストレスがたまったり、家庭では子どもの反抗期にイライラしたりと、頑張る40代の女性にぜひおすすめしたい一冊です。
辛いカレーを食べたあとのように、気持ちをリフレッシュできるでしょう。
著者名 | 岸本 佐知子 |
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出版社 | 筑摩書房 |
ページ数 | 218ページ |
エッセイのジャンル | 翻訳家の脳内体験・現実体験エッセイ |
おすすめポイント |
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40代の女性におすすめのエッセイ その3
JK、インドで常識ぶっ壊される
『JK、インドで常識ぶっ壊される』は、「第16回出版甲子園」で、大会初の女子高校生グランプリを受賞した熊谷はるかさんのエッセイ。
日本のJKライフに憧れていた中学校3年生の著者は、父親の転勤で急遽海外で生活することになります。行先は、ニューヨークでもなく、パリでもなく、「インド」。
混沌としたインドの国で揉まれに揉まれ、沢山の人たちと接するなかで、著者は自分の「当たり前」がこの国では「当たり前ではない」ことに気づき始めます。
分数が分からない家政婦のブミちゃん、地図が読めない運転手のモハン。外界から遮断されたスラム街で生きながら、屈託なく笑ってくれる子どもたち―。
ひりひりするほどひたむきに常識をぶっ壊され、純粋にまっすぐに、異なる文化と人々を理解しようと奮闘するJKの姿に、自然と胸が熱くなります。
『JK、インドで常識ぶっ壊される』は、家族や他人のことが理解できずに悩み、逆に「理解してもらえない」と孤独感に苛まされる40代女性におすすめしたい一冊。
自分と人との違いをありのままに受け入れるヒントを、JKが、JK節で教えてくれます。
著者名 | 熊谷 はるか |
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出版社 | 河出書房新社 |
ページ数 | 203ページ |
エッセイのジャンル | 女子高校生のインド滞在エッセイ |
おすすめポイント |
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40代の女性におすすめのエッセイ その4
じゃむパンの日
『じゃむパンの日』は、『乙女の密告』で第143回芥川賞を受賞した赤染晶子さんの著書。著者が2017年に早逝後、5年を経て2022年に出版されたエッセイ集です。
小児病棟に入院する女の子は、看護師さんに怒られて、手の爪の赤いマニキュアを落とします。ですが、足に塗った「赤」は落としません。
また、貸衣装屋でアルバイトをしていた著者は、ついてきた姑よりも、花嫁の味方をします。姑にそんな派手なドレスはおかしいと言われても、「あなたはきれいになるのだ」1)と著者は心の中で、花嫁を励ますのです。
日常生活の何気ない一瞬をまぶしく切り取ったエッセイの数々は、笑ってしまうのに、どこかじんわりと胸が温かくなるような、不思議な優しさで溢れています。
読み進めるうちに、著者の妄想と現実のラインがあいまいになるのも、本書の持ち味の一つ。心地よい筆者の文章も相まって、読む手が止まりません。
繰り返す毎日にマンネリを感じたとき、ふと空しくなった時、ぜひこのエッセイを手に取ってみてください。代り映えしない毎日が、実はかけがえのない宝物だと気づくでしょう。
- 1)赤染 晶子 『じゃむパンの日』(2022)114p.
著者名 | 赤染 晶子 |
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出版社 | palmbooks |
ページ数 | 208ページ |
エッセイのジャンル | 作家の妄想・日常・文学エッセイ |
おすすめポイント |
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40代の女性におすすめのエッセイ その5
本当に大事なことはほんの少し
『本当に大事なことはほんの少し』は、北京出身の料理研究家、ウー・ウェンさんの初エッセイ。
1990年に北京から日本にやってきた著者。日本人と結婚しますが、2005年に病気で夫を亡くします。その当時、娘は11歳、息子はまだ9歳でした。
2人の子どもを自分一人で育てていかなければならず、「時間がない、お金もない」2)という状況の中で、考え方や物のと付き合い方が、どんどんシンプルになっていったという著者。
本書には人生を一生懸命生き、大事なことと、そうでないこととを取捨選択してきた著者だからこそ伝えられる、人生哲学と知恵が詰まっています。
「人生で大事なのは
健康でいること、笑うこと。
おいしいものを食べること。」3)
著書のぶれない軸から生まれたシンプルな言葉は、日々の生活のなかで「しなければならない」に追われがちな40代女性に届けたいものばかり。「やることが多すぎる!」と投げ出したくなるときにこそ、読んでほしい一冊です。
ちなみに、料理研究家である著書の、シンプル“絶品”レシピも必読!
- 2)ウー・ウェン 『本当に大事なことはほんの少し』(2021)179p.
- 3)ウー・ウェン 『本当に大事なことはほんの少し』(2021)188p.
著者名 | ウー・ウェン |
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出版社 | 大和書房 |
ページ数 | 192ページ |
エッセイのジャンル | 料理研究家のシンプルライフエッセイ |
おすすめポイント |
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【40代の女性向け】自分に合ったエッセイの選び方
「エッセイ」と一口に言っても、日常を記したものから、子育て、グルメ、動物、ビジネス、タレント系などそのジャンルは様々。数多くのエッセイの中から、自分に合ったエッセイを見つけるには、どうしたらよいのでしょうか。
ここでは40代の女性が、自分に合ったエッセイを選ぶ際に押さえておきたいポイントをご紹介します。
ポイント①:自分の知りたいテーマや興味があるジャンルに沿って探す
まずは自分の知りたいテーマや、興味のあるジャンルに沿ってエッセイを探してみましょう。
例えば、子育てに悩みがあれば、「子育て エッセイ」でネット検索をしたり、旅が好きであれば、書店で旅エッセイのコーナーを訪れてみたりしても良いでしょう。そして、その中から自分の興味を引く本を選ぶのがおすすめです。
その際、ネットであれば試し読み、書店であれば実際に手に取って、自分の興味に合った本かを確かめることが大切です。自分に合った本を選ぶのは、いわば本とのお見合いのようなもの。文の読みやすさや読んでいるときの心地良さ、必要な情報が入っているかなど、自分と本との「マッチング」を確認しましょう。
ポイント②:本の装丁から選ぶ
特定のテーマやジャンルが決まっておらず、漠然と「何か面白いエッセイ」を探しているときは、本の装丁から目を引くものを選ぶのも良いでしょう。
いわゆる「ジャケ買い」ですが、装丁のフォントや色、描いてあるイラストなどから、自分が「好きだな」「素敵だな」と思う本を選びます。次に、本をランダムに開き、ぱっと最初に目に入ってきた一文が、自分の感性に響くかを確認。ここで「面白そう」と思えれば、その本を選びます。
この選び方の良い点は、新しいテーマやジャンルに挑戦できる点。普段なら選ばないような本を選ぶことで、新しい世界を広げられます。
ポイント③:偶然の出会いを大切にする
今の自分に必要な本、自分に合った本を見つけるのは、本を買いたいと思って本屋を訪れているときや、ネットで本を探しているときに限りません。意図しているときにピンとくる本が見つからない場合は、少し時間を空けてみることをおすすめします。
時間を空けてみると、思わぬところで自分に合った本が見つかるもの。筆者は、なんとはなしに入った本屋や雑貨店、フリーマーケットなどで、自分にぴたりと合った本を見つけた経験があります。偶然の出会い、意外と侮れません。
まとめ
本特集では、40代の女性向けに、「心が晴れる」おすすめのエッセイ5つを厳選してご紹介しました。
筆者は、Webライターをするとともに、大学の事務職員としても働いていますが、40代になってから、大学事務職員としてのポジションが変わり始めました。
「中堅」として、より責任が伴う仕事を任されることも増え、他の女性職員たちからは、同じ「女性」として仕事やプライベートの相談をされることも多くなり、プレッシャーを感じることも。
また、それと同時に、今までは平気だった残業を辛く感じる等、自分の体の変化にも気づき始めました。
実は筆者がエッセイを多く読むようになったのは、こういった”変化”を感じるようになってから。
そして、多くのエッセイを読むことをで筆者の心は晴れ、また、たくさんの元気をもらってきました。
気軽に読むことができ、元気をもらえるエッセイを探している40代女性の方は、本特集を参考に、ぜひ気になるエッセイを見つけてみてください!きっと心が晴れたり、新しい世界を知れたりするはずです。