初心者におすすめの陶芸作品を厳選! 皿、花瓶、オブジェを自分で作ってみよう

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初心者におすすめの陶芸作品!皿、花瓶、オブジェの名品を楽しもう

初心者におすすめの陶芸作品! 皿、花瓶、オブジェの名品を楽しもう

SPECIAL ARTICLE

著者・監修者

著者・飯島 均

飯島 均

筆者には陶芸教室を主宰していた経験があります。その頃は電動ロクロで器を作っており、オブジェは邪道とも考えていました。ところが、しばらくするとオブジェに興味が湧き、器に関心がなくなってしまった時期があります。しかし、時間の経過とともに考え方もかわり、現在は器とオブジェ、両方があるから陶芸は楽しい、と考えています。

はじめに

本特集では陶芸に興味を持ち始めた初心者の方のために、皿、花瓶、オブジェの3種類に分けて、その作り方とおすすめのプロ作家を厳選。さらに作品の魅力をご紹介します。皿、花瓶の実物が見たい方は、毎年秋に日本橋三越で開かれる「日本伝統工芸展」を鑑賞して頂くのが一番です。地方在住の方は巡回展に足を運んでみると良いでしょう。

また、オブジェの展覧会は、朝日陶芸展、日本陶芸展がありましたが、残念ながら現在は終了しています。しかし、展覧会で図録が販売されているので、写真でもきっとその作品の素晴らしさが伝わるはずです。

陶芸初心者にできる皿の作り方(ひも作り)

  1. 800gと200gの粘土を2つ用意。この分量で直径24㎝程度の皿がつくれます。
  2. 800gの粘土を丸くした後、手回しロクロの中心に置き、親指のつけね当たりを使い外側にゆっくりと伸ばしていきます。厚みは1.5㎝程度を目指すと良いでしょう。
  3. 外側まで平らに伸ばしたら、親指のつけねでロクロを回すと同時にもう一方の手の人差し指で皿の厚み部分を締め、正円を作ります。
  4. 濡れたスポンジで表面を平らにし、指でも中心から外側に向けて粘土を締めていきます。
  5. 200gの粘土で均一の太さのひもを作り、皿の外側の長さにします。何度か仮置きを繰り返し、ひもの長さを決め、外側に置きます。
  6. ⑤の粘土を指で外側は下から上に、内側は上から下へ軽く押して、ひもあとを消します。
  7. ⑥の粘土を両手の親指と人差し指でつまんで上へ伸ばします。この時、皿だからといって、いきなり横にのばすのはNGです。
  8. 立てた皿のふちを好みの傾きまで倒していきます。上から倒していき、底部分と調和させて完成です。
  9. 最後に竹べらで底部分の余計な粘土を斜めにそぎ落とし、底を正円にします。乾燥して高台を削り出す時に、これをやっておくと便利です。歪まないようにしばらく乾燥させた後、ひもで切り離します。これで完成です。

素晴らしい皿を作っているプロ作家とその作品

金彩正燕支蜻蛉文十稜鉢 小山 耕一|公益社団法人日本工芸会

皿に関しては東京に窯をもつ小山耕一氏(以下、敬称略)を紹介します。作品の写真は「日本工芸会」のHPをチェックしてみてください。様々な作品の写真を見る事ができます。
小山は「東京竜泉窯」という陶芸教室を30年以上も主宰しているプロの陶芸家です。実は筆者も小山に陶芸を習った生徒の中の一人。20年以上前に「陶芸講師養成コース」に在籍していました。本コースを受講するには、今後、陶芸で生計を立てていくことが条件でした。

小山は1983年に玉川大学芸術学科陶芸コースを卒業され、1990年に東京都台東区竜泉に築窯します。1997年 朝日陶芸展、特別賞受賞。それ以降、毎年色々な展覧会に作品を出品し、受賞を重ねます。日本工芸会正会員。正会員になるには日本伝統工芸展に何度も入選する必要がある、レベルの高い会員です。著書も誠文堂新光社から陶芸技法に関する書物を数冊、出版しています。

陶芸初心者の方が小山のようなすばらしい皿を最初から作る事は無理があります。しかし、作品を鑑賞し、自分の刺激にするのは良い事です。
「陶芸は生きがいになる」という著書を書いた林寧彦氏(以下、敬称略)は趣味で始めた陶芸に夢中になり、陶芸教室を開くまで、のめり込んでしまいます。サラリーマン時代の作陶記が「週末陶芸のすすめ」という著書にまとめられているので、興味のある方は読んでみると良いでしょう。林も日本工芸会正会員であり、立派なプロの陶芸家です。

小山の教室では、初心者にもやさしく、丁寧に教えてもらえます。筆者の経験では、陶芸家は自分の作る所をあまり他人にはみせたがらない傾向があります。ところが小山は、自分が電動ロクロで作る場面、乾燥した粘土を削る場面、釉掛けする場面を惜しげもなく、見せながら教えてくれるのです。それが大変楽しくて、勉強にもなりました。
小山の作品の特徴は、金属を塗って色を出す事です。皿の形もふちが丸い作品だけでなく、四角形だったり、五角形だったりするので、見ていて飽きる事がありません。おそらく、全部で3回焼成するのでしょう。素焼き、本焼き、そして金属を塗ってから2回目の本焼きをして、ようやく完成します。作品にはそれだけ、手間も燃料費もかかっているのです。

日本橋三越で個展を開催するほどのレベルなので、小山はプロ中のプロと言って良いでしょう。そんな先生が教えてくれる教室なのですから、陶芸初心者の方は少し遠くても行く価値ありです。

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陶芸初心者にできる花瓶の作り方(タタラ作り)

タタラという、作品の作り方をご紹介します。タタラは陶芸の小道具で、縦45㎝×横3㎝×厚み5㎜・3㎜・1㎜の板のことです。ある程度の厚みがある粘土を中心に置き、粘土の高さより低い、同じ高さにした何枚かのタタラ2組を粘土の左右に置きます。そしてしっぴき(粘土をきるための糸)を両手に持ち、タタラの上でしっぴきを押さえつけるよう上下にスライドさせます。そうすると目的の厚さの粘土の板を切り出す事が出来ます。

  1. 作りたい花瓶の形をあらかじめ考えておき、側面と底の型紙を作っておきます。
  2. 作品と同じ粘土で水分を多くした泥状のものを作っておきます。これを「どべ」といいます。
  3. 上記の方法で作った粘土の板を用意し、その上に型紙を置き目的の形に切り出します。
  4. 作品が歪まないよう粘土を少し乾燥させます。
  5. 粘土板が曲がらない位に乾燥したら、各パーツを接着します。接着部分の片方の粘土を針でギザギザにしてきずをつけます。②で作った「どべ」を筆に取り、そのギザギザに塗って接着すれば、完成です。

すばらしい花瓶を作っているプロ作家とその作品

角花生 重要無形文化財保持者 伊勢﨑 淳|公益社団法人日本工芸会

花瓶のプロ作家として、おすすめしたいのが備前焼の伊勢崎淳氏(以下、敬称略)です。

備前焼は日本六古窯の一つとして須恵器(古墳時代に使っていた土器)の系統をひいて発達してきた焼き物で、約一千年もの間、備前市伊部の地で焼き継がれてきました。
釉薬をかけない、飾り気のない素朴な味わいが「詫び」「寂び」の境地に相通じるものがあったのでしょう。茶陶として好まれました。千利休も備前焼を好み、利休が仕えた織田信長や豊臣秀吉も備前焼を好んでいたと言われています。特に秀吉は茶会を開く折々で備前焼を使い、自らの埋葬官にも備前焼を選んでいます。
伊勢崎は日本工芸会正会員であり、備前焼5人目の人間国宝です。作品は日本工芸会のHPで確認できます。筆者は伊勢崎の作る底に足がついたような花生が、オブジェのようでもあり大好きです。作る所を見た訳ではありませんが、おそらく、タタラで作っているのでしょう。ですから、今回の作り方としてタタラを選びました。

伊勢崎は1971年にヨーロッパを巡り、スペインのカタルーニャ地方を旅したことがきっかけとなり、伝統の中から新しいものを創りだそうと決意します。後に渡ったアメリカで彫刻的な作品からも刺激を受け、大胆でモダンな形が融合した、独特な作風の作品を生み出します。オブジェの作品も意欲的に作成しています。総理官邸の陶壁を手掛けたのも、伊勢崎です。
釉薬を使わないので素焼きの工程は基本的にはありません。また、絵筆で文様を描くこともない代わりに、狙うべき備前焼独特の文様があり、名前もついています。以下はその説明です。

緋襷(ひだすき)は備前土の素地に藁を巻いて焼成し、藁の燃えた成分が作品に付着して薄茶色の模様がつく焼成方法のこと。胡麻(ごま)は胡麻のような粒が作品についているのが特徴です。焼成中に松割木(焼成に使うまき)の灰が火の勢いにより吹き付けられ、その灰が高い熱により釉化してできます。色は白、黄、青など様々です。
牡丹餅(ぼたもち)は赤や茶色の牡丹餅のような丸い模様のことです。作品の上に丸めた土や小さな作品を置いてできた焼きむらが模様として美しく発色したものです。
桟切(ざんぎり)の桟は窯の壁のことで、壁には灰が溜まりやすく、そこに作品を置くと灰に埋もれていきます。その直接火があたらない部分が燻されると化学変化を起こし、独特の灰青色~黒褐色に変化するのです。

備前焼では窯詰め、窯だき、窯の冷却、窯だしに1ヶ月もの日にちを要します。窯詰めはとても重要な工程です。窯の中の火の通り道や灰の降りかかり方を計算して、器をどこにどのように置くかを決めます。そして2週間に及ぶ焼成で焼き締めがあり、その長い時間の中で起きる窯変が命です。
伊勢崎は語っています。「すべてを偶然性に委ねるわけではありません。窯に入れるという行為は神に委ねる事でもあります。人間の力だけでは不可能な美しさが生まれてくることもあります。炎の偶然性と陶芸家の意図。双方が合致して初めて満足のいく備前焼が誕生するのです。」と。

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陶芸初心者にできるオブジェの作り方(型作り)

ランプシェードの作り方をご紹介します。器ではありませんが、「明かりを取り入れる」機能をもっているので、正確に表現すればオブジェではありません。しかし、それを作ってみるのもきっと楽しい事でしょう。

型は直径10㎝位の円柱の缶を想定します。

  1. 缶を新聞紙で包みます。その上にのせる粘土がくっつかないようにするためです。
  2. 「3.陶芸初心者にできる花瓶の作り方(タタラ作り)」で説明したタタラを用意し、ヘラを使い粘土をやさしくなでるように、よく締めます。
  3. 缶を横にして粘土を巻きつけ、余分な粘土は切り落とし、つなぎ目もきれいにします。
  4. 缶を立てて下着の切れ端か、日本手ぬぐいで覆い、両手で缶に密着させます。それと同時に両手を寄せるようにして粘土を締めます。上部の蓋も作り、接着し、缶を外します。
  5. 歪まない程度に乾燥したら、粘土をくりぬいていきます。そのための道具は陶芸用具店でも販売されていますし、百円均一の料理道具でもかまいません。くり貫き方の参考例として、薩摩焼沈壽官氏の「透かし香炉」をご覧ください。こちらの作品もくり貫く事で作られています。小さな穴を数多く開けたほうがきれいでしょう。穴があけ終われば完成です。

すばらしいオブジェを作っているプロ作家とその作品

加藤 清之展  - 陶と磁 - | LIXILギャラリー

オブジェでおすすめのプロ作家と言えば、瀬戸で活躍している加藤清之氏(以下、敬称略)です。
加藤は、陶土のオブジェ、磁土の白いオブジェ、器では抹茶茶碗やぐい吞みもつくります。その中で筆者が一番好きな作品は、巨大な壁、花器でもあるような陶土のオブジェシリーズです。土に刻まれた何ともいえない模様。廃墟の街・近未来都市を連想させる作品の壮大で不思議な世界観。作るところは見ていませんが、物凄い早さで仕上げる姿を想像してしまいます。例えば、版画家・棟方志功氏が版画を彫る時のように。

加藤は瓦師の家に生まれ、家業を手伝う中で陶芸の技術を身につけたといいます。幼いころから絵を描く事が好きで画家に憧れていたそうです。
昭和26年、美術雑誌「みずゑ」にイサム・ノグチ氏の陶芸作品のモノクローム写真が数点、掲載されました。撮影者は土門拳氏です。加藤はこれを見て、ショックを受けます。「焼き物もいいなあ。焼き物でこんなに面白いものを作る人がいるんだなあ」、そう思うようになります。
加藤が26歳の時、素焼きのオブジェが華道草月流初代家元、勅使河原蒼風氏(以下、敬称略)の目にとまり、買い上げられることに。以降、次々と新作がコレクションされ、その作品に花が生けられました。

加藤はこの出会いによって、蒼風の総合芸術家としての高い感性に大きな影響を受けます。
それ以降、加藤の怒涛の活躍が始まるのです。1958年、日展に出品した花器が初入選、1964年、1965年と連続して朝日陶芸展の大賞を受賞しました。そして、現代陶芸の世界で、詩的で清涼感の漂う作品を生み出し続けています。

加藤はビニール袋に入って精製された粘土は使いません。採掘場の中で育ち、瓦作りによって色々な土を大量に使用した経験から、どの層の土がどんな性格の粘土になるかがわかるのです。山から取ってきた土から粘土をつくります。そして2㎝のミニチュア花器から幅4.5m、高さ3.3mの陶壁まで、強靭な造形力と作品全体に神経を配る繊細な感覚によって作品を作り出します。

加藤は次のようにも主張しています。
~ロクロがうまくなる事は機械に近づく事になりやすい。技術のうまさだけに頼らず、感覚でロクロを引くようにいたい。定規の線ではなく、感覚の線を引きたい。そうすればロクロでもみずみずしい感覚の世界が広がるはずです~と。

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まとめ

本特集を読んでいただいた方が、「陶芸の器もオブジェも両方いい」と感じてもらえると、筆者もとてもうれしいです。古墳時代から作られている器と比較すると、戦後誕生したオブジェの歴史はまだ浅いので、違和感を持つ方がいるかもしれません。今回ご紹介したプロ作家の伊勢崎淳、加藤清之は両方を作られています。つまり、陶器とオブジェを隔てる壁は、あるようでないのです。一時期の筆者のような偏見をもたずに、どちらも鑑賞してみることをおすすめします。

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